バチカン奇跡調査官15 ゾンビ殺人事件
バチカン内の『聖徒の座』に所属する神父、平賀・ヨゼフ・庚とロベルト・ニコラスは奇跡調査官として世界中の奇跡の真偽を調査判別するために日夜取り組んでいる。
天才科学者の平賀は研究調査に没頭すると寝食を忘れて熱中してしまう上にかなりの天然であり、暗号や古文書解読のエキスパートであるロベルトは平賀のよき相棒として、時に平賀をやさしく見守る保護者的存在として、数々の怪現象に取り組み、鮮やかに解きほぐしていく。
バチカン奇跡調査官シリーズの第15作は『ゾンビ殺人事件』。
『天使と悪魔のゲーム』、『独房の探偵』に続く短編集の第三弾です。
サスキンス捜査官と部下のミシェルが活躍する『チャイナタウン・ラプソディ』、
マギー博士が母を殺された自閉症の少年のために奔走『マギー・ウォーカーは眠らない』、
無名の画家に心酔する絵画修復士見習の青年に平賀とロベルトが力を貸す『絵画の描き方』、
独房の虜囚ローレン再登場の『ゾンビ殺人事件』
の4話が収録されています。
(以下、若干のネタバレがありますので、未読了の方はご注意ください。)
【チャイナタウン・ラプソディ】
ビル・サスキンス捜査官の部下、ミシェルの婚約者が行方不明に。どうやらマフィアの抗争に巻き込まれ、拉致されたらしい。
ビルとミシェルは振興マフィアの牙城・満漢楼を探ろうとするが、なぜか近づくことができない。
そんな彼らに声をかけてきたのは王という老婆だった。
時期を同じくして、文化展開催のため中国から運ばれた兵馬俑が盗難にあうという事件が発生していた。
この二つの事件には驚くべき関連があって・・・
いつも怪現象が科学的に解明されていくので、今回はどんなふうに落ちがつくのかと思って読んでいましたが、最後までファンタジーでした。
平賀もロベルトも登場しませんものね。
個人的にはこういう怪奇譚は大好きなので、結構楽しめた作品です。
【マギー・ウォーカーは眠らない】
学会に出席したマギー・ウォーカー博士がドライブ中に遭遇した殺人事件。母を殺害された自閉症の少年・ダニエルを保護することになった 博士の奮闘が描かれます。
普段、感情を表に出さない博士の思いがけない一面に触れることができる小品です。
マフィアのボスを狙撃する博士は身震いが出るほどかっこいい!
これからの博士の活躍が楽しみになりました。
【絵画の描き方】
平賀に助けを求めてきたのは絵画修復士見習いの青年。
彼に協力して、無名の画家の絵の具の材料の分析に乗り出す平賀とロベルト。
作者の博識振りが存分に発揮され、昔の画家の絵の具作りの 苦労がよくわかりました。
最後、画家の末裔の女性と修復士見習いの青年の意外なつながりが判明しハッピーエンドを思わせる大団円。
平賀の朴念仁ぶりも遺憾なく発揮されています。
【ゾンビ殺人事件(独房の探偵2)】
独房の探偵再び。
カラビニエリのアメデオ大尉と心理分析官フィオナも再登場します。
6年前に死んだはずの人間がゾンビとなって地中から現れ殺される。
しかも同じようなゾンビ死体が31体も発見されるという、あまりにもセンセーショナルな事件ですが、ローレンはエドアルドの協力を受けあっさり解決してしまいます。
それにしても、保険金詐欺システムが六十年も続いていることにも驚きです。役割を演じる人間が入れ替わりながらシステムは回り続けるーーーなんとも空恐ろしい事件でした。
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