バチカン奇跡調査官5 血と薔薇と十字架
バチカン内の『聖徒の座』に所属する神父、平賀・ヨゼフ・庚とロベルト・ニコラスは奇跡調査官として世界中の奇跡の真偽を調査判別するために日夜取り組んでいる。
天才科学者の平賀は研究調査に没頭すると寝食を忘れて熱中してしまう上にかなりの天然であり、暗号や古文書解読のエキスパートであるロベルトは平賀のよき相棒として、時に平賀をやさしく見守る保護者的存在として、数々の怪現象に取り組み、鮮やかに解きほぐしていく。
バチカン奇跡調査官シリーズの第5作である『血と薔薇と十字架』では、いつもの奇跡調査とは趣を変えて、吸血鬼伝説の謎に迫ります。奇跡調査からは少し離れていますが、イギリスの田舎の荒涼とした風景と吸血鬼という取り合わせが私的にはかなりツボでした。
(以下、若干のネタバレがありますので、未読了の方はご注意ください。)
聖人の血にまつわる奇跡調査のため、英国のローマ・カソリック教会を訪れていた平賀とロベルトは帰途濃霧と嵐のため乗車していた車が崖から転落するという事故にあう。
事故現場からどうにか平賀を助け出し、救助を求めて教会を探すロベルトは墓場で異様な光景を目撃する。それは吸血鬼に襲われ蘇ったイーディという女性に対する吸血鬼退治の現場だった。
二人がたどり着いたホールデングスという田舎町には古くから吸血鬼の伝説が語り継がれており、町の旧家ルーク家の客人として滞在することになった平賀とロベルトも、黒いマントに赤い瞳の怪人を目撃する。
次々と町の人間が吸血鬼の犠牲となっていくなかで、代々吸血鬼の被害が出るのはこの地方の領主の息子であるエルトン伯爵が冬の間滞在している時期と重なっていることが判明する。
やがてルーク家の令嬢シャルロットまでが吸血鬼に襲われるという事件が発生し、物語は一気にクライマックスへとなだれ込んでいきます。
当初より、エルトン伯爵の回想(独白)が随所にさしはさまれているので、ストーリー展開はおおよそ読めているのですが、吸血鬼やそれに類する伝説や伝承に関する作者の知識の幅広さに関心させられます。
また、今回エピローグに、ローレンが登場します。これまではメールでのやり取りだけだったローレンが平賀に実験の成果を披露し、吸血鬼の謎は科学だけでは説明しきれないものがあることを示唆します。また、ローレンに示されたPC上の写真から例の人が思わぬ形で暗躍していることが判明。
ガルドウネの金がいよいよ世界を狂わせることになるのか、そうなればバチカンも無関係ではいられなくなりそうで、波乱を予感させるエンディングとなっています。
電子書籍版:
ところで、イギリス、吸血鬼、とくれば思い出すのが、萩尾望都先生の「ポーの一族」シリーズ。最近新作が出ているようです。
新装版:
新作:絵柄が少し変わっていますが、繊細な画風はそのままです。
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