ハルカのつれづれ日記

日々のちょっとした出来事、興味をもったことなど、気ままに綴る日記です

バチカン奇跡調査官16 二十七頭の象

バチカン内の『聖徒の座』に所属する神父、平賀・ヨゼフ・庚とロベルト・ニコラスは奇跡調査官として世界中の奇跡の真偽を調査判別するために日夜取り組んでいる。

天才科学者の平賀は研究調査に没頭すると寝食を忘れて熱中してしまう上にかなりの天然であり、暗号や古文書解読のエキスパートであるロベルトは平賀のよき相棒として、時に平賀をやさしく見守る保護者的存在として、数々の怪現象に取り組み、鮮やかに解きほぐしていく。

バチカン奇跡調査官シリーズの第16作は『二十七頭の象』。

 

午前2時にある絵画の前に出現し、予言をするというマリア像の謎に、平賀とロベルトが挑みます。一方、独房の探偵シリーズでおなじみのアマデオとフィオナは、ローマ郊外の町で発生する連続不審死事件の捜査を行うことに。

交わらそうで交わらない二つの事件が錯綜して読み手を混乱させていく、一種の叙述ミステリ的な展開のストーリーとなっています。(以下、若干のネタバレがありますので、未読了の方はご注意ください。)

 

 

 バチカンの絵画間に予言をする聖母が現れるという手紙の真相を探るため、フーモという近郊の街を訪れる平賀とロベルト。

一方で、アマデオとフィオナが捜査する、『十字路殺人事件』が展開していきます。

今回は場面の転換が早く、時間軸の違う事件が平衡して描かれ、しかも事件が多いため登場人物も多岐にわたり、それぞれがどう繋がっているのか分かりにくく、私的には読んでいてかなり混乱しました。

正直、読み直してやっと、おぼろげに全貌が見えた感じです。

 

以下、完全にネタバレですが、自分なりに理解したところを書いてみようと思います。

 

 1.7年前の出来事

 ① ライモンド・アンジェロがオーバードースで27歳で死亡。

 ② ライモンドのマネージャー、ロイがライモンドの偽者と強姦ビデオを撮影する。

 ③ ダニエラ・シュミットがだまされ、死んだライモンドと再会できたと思い込む。

 ④ エンマ・ドナートもだまされるが、ライモンドが偽者だと見破り、ロンに殺害され、墜落しに偽装される。

 ⑤ ロンと偽ライモンドは失踪。ライモンドに会えなくなったダニエラはネットを使ってライモンドの手がかりを探す。

 ⑦ カメリアは寝ぼけ状態の恋人ジャコモに悪魔と間違われて殺害されてしまう。

 ⑧ ゾーエが愉快犯イラーリオ・ペドリーニに撲殺される。傍に象の数え歌の怪文が書かれていた。

 ⑨ フィオナが事件に興味を持ち独自に行動を開始。謎の女に襲われたところを、『門番』のような風体のイザイアに助けられ、交流を持つようになる。

また、アメデオ大尉が捜査に乗り出す。

 ⑩ フランチェスカは姉ヴェロニカに突き飛ばされ死亡。友人アガタと遺体を地下に隠し、遺体を発見した父が一連の殺人事件と同一犯に見せかけるため工作。

 ⑪ 青酸カリによる少年少女の死亡事件はダニエラ・シュミットによるもの。少女たちはライモンドの殉教者でみずから毒を飲んだ。青酸カリは昆虫蒐集家の父親が標本作りのために所持していたもの。

 ⑫ ビアージュ事件の犯人は発見者のトラック運転手、アルバータ

 ⑬ 心臓を抉られた嬰児事件はサタニストの両親の犯行。

 ⑭ ペッピーノ・カムッシェの交通事故は路面の落書きの悪魔の紋章を見てパニックになり、ハンドル操作を誤ったもの。

 ⑮ キーン・ベニーニはゲームの世界と現実を混同し、世界を救うためと信じ、トレヴィ広場で『二十七頭の象』と名乗る芸術家集団を襲撃するという事件を起こす。

 

 

※象の数え歌は見世物屋ロドヴィーゴが魔術師に扮し、悪魔召還の呪文としてテレビ番組で紹介したもの。

※ ローレンは青酸カリのルートを追っていて事件に気づいた。

※この7年前が「独房の探偵」の2年後くらいと思われる。

 

 

2.現在の出来事

 ① フーモ市在住のデーボラからの手紙で、平賀とロベルトが午前二時の予言の聖母の調査を始める。

 ② 予言の聖母のニュースがテレビで放映される。

 ③ 第三の予言をバチカンが隠しているというニュースに怒った民衆がサンピエトロ広場に押しかける。

 ④ 平賀とロベルトの前にフィオナが現れ、ローレンの命令で会いに来たことを伝える。

 ⑤ キーンが体に爆弾を巻いてピナコテカに進入しようとして取り押さえられる。

 

※ キーンは二十七頭の象事件の後療養所に入れられていて、フィオナの患者となっている。

 

デマや流言、フェイクニュースが瞬く間に拡散し、それを真実と思い込んだ人々がパニック状態になり、連鎖的に犯罪が起こっていくという、現代社会の怖さをあぶりだした作品です。

 

はじめ二つの時系列が同時に起こっているものと思って読んでいて、今回は平賀とロベルトの登場が少ないなぁ、と思っていました。

最後まで、二十七頭の事件が7年前のことだとは気づかずじまいでした。

また、キーンの心理描写が、どう考えても正常な思考ではないと思われるが、どこまでが彼の妄想でどこまでが現実か判別しづらかったこともあると思います。

 

読み返すと、途中でフィオナとアメデオの会話から、ローレンとであって2年後くらいということが分かるようになっているのですが、読み飛ばしてしまっていました。

あまり悲惨な事件が多くて、自分も麻痺してしまっていたのかもしれません。

叙述ミステリだったのだということが最後のほうになって理解できました。

 

それにしても本当に恐ろしいのは人間の心理。

宇宙戦争』ってそういうことだったのか、とうならされました。

すべてを見通していたローレンガ平賀とロベルトを助けるべくフィオナを動かすーーー

ローレン失踪の理由もほぼ明かされてきました。

次巻、ローレンから何らかの働きかけがあるのか、楽しみなところです。

 

 

 

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